2ちゃんねるに対する雑感:公然情報集約の場はどこに行くか?


2ch管理人である西村博之氏は、これまで名誉毀損などで訴えられ敗訴したにも関わらず賠償金を払っていなかった。その西村氏に対してついに強制執行が行われるそうである。西村氏の名義になっている2ch.netのドメインが差し押さえられる見通しで、2chは停止すると騒ぎになっている。


以下は、最近すっかり離れているが、2002年くらいには名実ともに2ちゃんねるのヘビーユーザー「2ちゃんねらー」だった俺の雑感。2chが潰れるかいなかは分からないけれど、とりあえずこれまで思ったことをまとめておこう。


まず、正直言うとニュースに対する世論を知る場としての2chに期待はしていなかった。あれが世間の本音の意見だとかいう寝言を言う奴もいたが、2chには本音の意見「も」書けるというだけで、政治団体などが世論を誘導する工作をしようと思えばいくらでもできるのである。


もちろん日常でこんな笑えることがあったとか、そういうほのぼのとした会話ができるスレもあるが、そうした場ならブログでもmixiでも代替することができる。


問題は、情報(Information)の中心としての2chの機能をどこが引き継ぐのかということである。残念ながら、各種メディアの情報が集約される場としての2chにかなうものはない。


たとえば「2007年統一地方選挙における××市の候補者の情報」なんていうローカルな情報を集めるには、各紙の地方版を転載・引用している2ch地方自治板のスレッドは有益であった。都政新報なんていう専門紙があることを知ったのは2chのスレッドを通じてだ。


はてなブックマークmixiのコミュなどを使ったのではこうした濃密な情報は収集しにくい。はてなブックマークから収集できるのは一般的な情報であり、mixiで地域ごとのコミュというと近所の美味しい店だとかの話がメインで、政治の話がしにくい雰囲気がある。


mixiに地元政治専門のコミュがあっても良いと思うが、そうした情報を流す人というのは地元の政治に関わっている人が多いわけで、ハンドルネームであれ一個の人格として関わるのには差し障りがあるわけである。複アカでその情報交換のためだけにアカウントを作るのでなければ、自分の所属している陣営が分かってしまうからである。


もし敵対する陣営の人間がいるとはっきり分かってしまうと、たとえ地元紙で公開されているようなレベルのものであっても情報交換しにくくなってしまうだろう。匿名だと「まぁ、敵対する陣営もいるかも知れないけど俺の身元も分からないしいいか」みたいなノリがあった。(そして一般人である俺はそういう情報交換の場の恩恵に浴していた。)


僕が2ちゃんねるに期待していたのは、こうした「細分化されたテーマごとに、立場を超えて、公然情報を集約し交換できる場」としての機能だけだった。


僕は2chがメディアの言っていることの矛盾点とかを突く「検証能力」については正直言ってそれほど高い評価を与えていない。ネットだけをつかったのでは、記事の矛盾点であるとか間違いを探すことはできても何が正しいのかを知ることはできない。


また、電話で突撃取材するとかいうのも、責任のあるひとと直接通話できるならともかく、そうでないのなら電話に出る下っ端の人を困らせるだけで何か本質的なことが分かるわけではないと思うのだ。


それに、自分の日常生活に実害の出るような大誤報ならともかく「御社の紙面では××について触れられていないがどういうことか」みたいなことを義憤に駆られて電話する気にはなれない。僕からすれば、○○新聞では××について触れられていないという事実を知るだけで充分なのである。


2ちゃんねるを中心によく分からない運動が起こるのを見るにつけ「感覚的に理解できないな」と思うようになっていた。


そういうわけで僕自身は距離を置いていたのだけれど、リアルでオフ会や運動をした人たちの間にはつながりができあがっているだろう。残念ながら僕が違和感を持った「勢力」としての2ちゃんねるは、2ちゃんねる本体の停止によって消滅することはない。


そんなことより、僕が気になってしょうがないのは、2ちゃんねるがなくなったあと、どこをつつけば、「細分化されたテーマごとに、立場を超えて公然情報を集約し交換できる場」に辿り着けるのかということである。


【参考情報】
ユーザーショック…2ちゃんねる、再来週にも強制執行
http://www.zakzak.co.jp/top/2007_01/t2007011201.html