「戦略的な関係」の欺瞞

そしてその「多元主義コミュニタリアニズム」に対抗する為に、「闘争的コミュニタリアニズム」の方も共同体を作るんだけど、でも例えそんなことをしたって「闘争的コミュニタリアニズム」は常に絶え間なき闘争を命じるものだから、やがてその共同体内でも闘争が生じて、大勢の犠牲者を出して共同体が解体する訳です。

自分はRIR6がどのような共同体に所属しているのか知らないし、そこでどのようなやりとりがあったのか、ということを知らないし、闘争的コミュニタリアニズムを共有する人間によって作られた共同体というのががどのようなものであるのか、想像もつかない。なので、私の知っている限りの例で考えたい。

ある目的を持った集団が解体するパターンはいくつかあるかある。そのうちのひとつに、その集団が掲げている「目的」とは異なった目的を持って入ってくる人間がいるということがある。なぜそのようなことが起こるかと言えば、ある行動を起こしたときに、戦略的な目標以外にもいくつかの副次的な効果が生まれ、そして集団の目的からとは微妙にズレた、副次的な効果を目的として集団に入ってくる人間がいるからである。

そうしてそのような人間が入ってきた場合、具体的な行動を議論する際に深刻な意見の相違を引き起こすことがある。自らの目的が潰れてしまっては意味がなく、そのために集団が「目的」として掲げているものに妥協を求めるからである。

RIR6が例としてあげている「遠くの敵を倒す」ことを考えてみよう。そこで生まれてくる目的はそれぞれ異なる。相手に不愉快な思いをさせられたのでその恨みを晴らしたいと思うもの、あるいはその倒す過程を通じて売名を試みたい者。売名を試みたい者にとっては卑劣な手段を使ったのではかえって名を汚すので避けたいであろうし、相手に不愉快な思いをさせられた恨みを晴らそうと思う者はいかなる手段を使っても相手を叩きのめそうとするだろう。

RIR6は目的なきコミュニケーションに対置される存在として、戦略的な友好関係、というものを挙げる。しかし私は、RIR6のいう「戦略」の考え方はいささか丁寧さを欠いているように思う。「この件では手を結ぶ」という程度の簡単なものではない。