秋葉原通り魔事件について、全国紙五紙社説のまとめ。


今回の件で、朝日、読売、日経、産経、毎日の五紙は良識を示している。それは五紙の社説いずれにも、ゲームとの関連性について言及したものはないからだ。唯一ネット社会の影響について言及した毎日新聞も「若者の情報の発信地で犯行に及んだのは、ネット社会の影響を受けたせいだろうか。」という表現である。もちろん五紙のなかにもダガーナイフはドラクエにも出てくる武器だなどと書いている記事もあるようだが、それは書いた記者個人が馬鹿なのだと思う。社説にはそういう表現はない。


では、以下におおまかな論調の違いと個別の対策についてどう言及しているかをまとめておきます。


【全体的な論調】

  • 朝日:今回の事件の容疑者の経歴を中心に説明しながら、動機を解き明かせと説いている
  • 読売:類似の事例を分析しながら、未熟な若者が増えているのではと問いかけている
  • 日経:警察でできることの検証と専門家による動機の解明が必要としながらも、格差社会の状況は9年前と変わっていないとする
  • 産経:秋葉原は若者の人気スポットで、無防備な市民を狙う犯罪が増えているので、国民の自覚が必要だとする
  • 毎日:類似の事件を多発させないよう、刃物の規制を強化すべきとする。動機の解明も必要

どこの新聞も似たような文章ですので、要約するのが大変でした。しかしよーく読んでみると各紙微妙に違います。後述しますが、警察と市民のかかわり方についての部分は結構くっきり違いが出ているように思います。


【携帯サイトへの書き込み】

  • 読売「速やかに警察に通報され、取り締まることができるような仕組みも検討課題」
  • 朝日「だれかが気づき、手を打てていれば」(仕組みの整備には言及せず)


全国紙の社説が出揃ったあと、総務省が犯罪予告のシステムのために数億円の予算を要求するという報道がありました。効果があるかどうかも分からないこの予算要求は、まったく不愉快なことであります。そうした点で、朝日新聞が通報のシステム整備に言及していないのは良識でありましょう。

【刃物の規制】

  • 毎日「殺傷力が強く、日常生活では必要性の低い刃物については、銃器に準じた取り締まりを検討すべき」
  • 日経「殺傷力の高い凶器のナイフに、犯人は、どう目をつけ入手したのか」検証が必要


【警察と市民の関わり方】

  • 日経「警察の力が及ぶ点に、まず検証が要る」
  • 毎日「警察も市民も、模倣犯への警戒を怠ってはならない」
  • 産経「国民一人一人が治安対策に関心を抱き、安全への自覚を持つことが肝要だ」


トラックが襲い掛かってきたらからはその場から逃げるしかない。どんな力があってもかなわないのだから。オタトークに熱中するのも良いが、常に周囲に意識を向けよう。すべての交差点にトラックを制止するためのパトカーを配備するなどということはできない。
そういうわけで国民の自覚をうながす産経の論調に賛成です。

【その他の対策】

  • 日経「人が大勢集まる場所に警察官を目立つように配置していたらどうだったのか」


洞爺湖サミットの影響で、繁華街を巡回する警察官が増えていたように思う。でも地方から来た人にはそんなことはわからない。

今回、一番意味不明だった文言

晒しあげておきます。毎日新聞からです。

通り魔事件は、なぜか新たな事件を誘発する。今回の事件が7年前の大阪・池田小の児童殺傷事件と同じ日に起きたのは不気味だ。人込みに車で突入した上で刃物を振り回す手口は、9年前の下関通り魔殺人と符合する。下関の犯行は、3週間前の東京・池袋の通り魔殺人に触発されたことが判明してもいる。

言いたいことはわからないでもないが、あまりにも突っ込みどころの多い表現である。下線部の「通り魔事件」は「硫化水素自殺」に言い換えても同じことではなかろうか。通り魔事件のみが新たな事件を誘発しているのではなく、似たような事件が誘発されることは多々あろう。